元猟師の親戚に話を聞きにいく

親戚に元猟師がいるので、ちょっと話を聞きにいってきました。今は引退しているのですが50年以上のキャリアがあり、私の実家の近く、滋賀県北西部で活動してきたそうです。もちろん下記ノウハウはローカルなものなので、他にも色々あったりするのでしょうが、結構マニアックな話が聞けたので、紹介します。
※猟期、狩猟免許の話等、教科書に載っていることは省略します。

※私の父方の祖母の弟にあたる。70台後半。このあたりは一人称を「おっさん」という習慣があり、それが転じて自分を「オサーンオサーン」と呼ぶ(最初何を言ってるのか意味わからず)。手前に見えているのが猪の牙で作ったキーホルダーだが、相当鋭利でこれが高速で突っ込んでいたら皮膚なんて簡単に破れることを理解

・集団で猟。猪がこの山に何頭いるかまで正確に把握。「何匹逃げたので、あと何匹残ってる」レベルまで把握する。追い込む班と仕留める班に分かれる。獣道も正確に把握して待ち伏せする。獣道はずっと変わらない。だから、どこで猟犬を放せば、どこに猪が逃げてくるかまで予測可能(「目の前を通る」らしい)。
・猟の成功はかなりの部分、に依る。冬山で猪を見つけるのは、かなりの部分狩猟犬の能力に依存。いかにいい犬を仲間にするかが重要と終始強調。
・実際、猪と戦える優秀な犬の場合、人間は「手づかみ」で猪を捕らえられる(←犬が戦っている間、猪の後ろ足を掴み、紐でくくりつけてしまう。そしてそのまま木にぶらさげて処理開始。その場で血・内臓を抜いてしまう)。
・猪は凶暴。優秀な犬ほど猪に勇敢に向かっていくので、残念な結果になることもある。獣医には常連で高くつくこと多々。
・ただし犬も「一人」とカウントし、猟の分け前は「一人分」配分する。
・優秀な猟犬(大人)は一匹100万円くらいする。だから子供の頃から飼って猟に同行させながら育てる。
・猟犬は番犬としても優秀。泥棒が来た時、激しく吠えて通知。セコム機能があるらしい。
・使用銃はライフルだが、猪を追い込み近距離で撃つので、あまり銃の性質に関する言及はない。重要視していない模様。ライフルはやはり威力が強すぎて「肉が痛む」とのこと。ただし、撃つときは肩から上を狙う。
・地質によって、追跡の難易度は変わる。この辺りは砂地だから、足跡はつきにくく難しい。赤土とかならやりやすい。
・ハイシーズンはやはり年末まで(注:猟期は11月中旬から)。しかし、メスはほぼ通年美味しい。オスは正月まで。それ以降は臭くて食べられない(「犬のえさ」らしい)。
3歳までの猪が一番美味しい。それ以降は肉が硬くなってしまう。
・現役時代はグループで1シーズン80匹程捕獲。雪が深くなる福井県のほうから猪が移動してくるらしく、滋賀県北部に遠征することも多々あったらしい。
・猪の数は変動。最近減ってきたけどまた増えると予想。1頭から3〜5頭子供が産まれるので繁殖能力は高い。大体、5頭いれば2頭くらいしか生き残らない。理由は親からはぐれて栄養失調になったりするので。
・数年前、琵琶湖の湖畔で出産した猪がいて、そのウリ坊も育てている。
・キャリア中無事故
・現在、私有地で5匹の猪を飼育中。罠にかかったウリ坊をもらい受け飼育。
・毎日餌付け。ただし猪はデリケートな生き物だから、人間の姿を見せないように囲いをしている。
・(なんと)養殖のほうが美味しい。麦、とうもろこし、豚向けの配合飼料を与えるとよい。
・解体するシーズンは12月。注文があり次第対応。今年解体する際は現場で勉強させてもらうことで合意。処理する時は、水で窒息死させる。
・定年前は、ガソリンスタンドで勤務。私の父の話によると、獲物をガソリンスタンドにぶら下げていたらしい。さぞかし客は腰を抜かしたはずだ。

[資料写真]

猟の舞台となる比良山系。浮世絵にもなった近江八景の「比良の暮雪」のモデルの山だが、ぱっと見は至って普通の山。滋賀県西部は琵琶湖と山間部との距離が近く、鹿が琵琶湖に水浴びに来たりする。この写真のすぐ後ろは琵琶湖。


引退前の記念写真らしい。このサイズで10万〜15万円くらいで売れるとのこと。


皮をはぐためのナイフ。全てのナイフは自分研いで使いやすいように加工。銃刀法の関係も配慮して色々長さを調節するらしい笑。柄は鹿の角で作成。


お腹を縦に裂くためのナイフ。切る際に歯にあたる障害物をうまくかわせるように工夫した作りになっているとのこと。


とどめをするためのナイフ。これを脇から刺して心臓をつくとのこと。かなり鋭利。


アバラの辺りの肉をこそぎ取るためのナイフらしい。骨の周りをうまく切れるように、刃の先端を横に切り取ってある。


猪の胆嚢の干物。漢方薬として使用。胃がもたれたら飲むらしい。ちなみにオサーンの奥さんは飲まないらしい笑