軽いタッチでずばっと核心をつく一冊、村上福之『ソーシャルもうええねん』

ウェブビジネスとフリーで働くことについて、ずばっと核心をつくような一冊を発見したので、紹介します。

ソーシャルもうええねん (Nanaブックス)

ソーシャルもうええねん (Nanaブックス)

  • 作者: 村上福之
  • 出版社/メーカー: ナナ・コーポレート・コミュニケーション
  • 発売日: 2012/10/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の村上福之さんは、離婚して元嫁からもらった慰謝料で起業、実績ゼロでCNETブログ(http://japan.cnet.com/blog/)にブログの執筆を開始。特にやることもないから、ブログを書き続け仕事をゲットしていったという豪傑です。今も自分で立ち上げた会社、クレイジーワークス(http://www.crazyworks.jp/?page_id=2)の代表、というか「総裁」をされています。
本書はそのブログの記事を加筆して修正したものだそうです。

Facebookのいいね!やTwitterのフォロワーは金で買えるという話、携帯のソーシャルゲームにお金を払っているのはブルーワーカー、という身も蓋もない話から、海外のサービスをパクって1日で作ったサイトを150万円でヤフオクで売ったという痛快な話まで、ブログならではの軽いタッチながら、引き込まれる話がならんでいます。
しかし、痛快な話といっても背景には深い話が潜んでいたりして、実は「海外のサービスをパクる」ことは、mixiを最初につくったプログラマ、衛藤バタラさんの「いろいろ考えるより、海外で話題のサービスをパクれ!僕も、Friendsterというサイトを徹底的にパクって、mixiを立ち上げた!」という発言を参考にされたそうです。今や誰もが知るSNSの原点にはこんな発想があったのか、と驚きます。

そして、村上さんは一人で起業された方なので、軽くみえる発言の中に猛烈に深いなというものがいくつもあります。
動いているものを見せれば、大人は納得する
「エラいオッサン」は若い人の文章を3行以上読まない、とした上で、「エラいオッサン」を説得するには、パワポのきれいな資料より、とりあえず動くものを見せる方がよいとされています。「エラいオッサン」はイノベーションや新しいものよりも、自分の担当の仕事について、いかに責任取らずらずすごすかが重要。よって難癖つけてくるのは当然で、黙らせるには実際に動いているものを見せるのが一番とのことです。納得。

「お金を払う」ではなく「お金をもらう」とスキルは高速で身に着く
やはり、期限と成果物を問われる仕事のかたちにすると、それに関連するスキルは体系的・網羅的に学べるわけではないかわり、お金が発生する分野に関しての知識は急速につくとのことです。これも納得。

「顔色の法則」。週に一度顔を合わせないプロジェクトは破綻する
ネットを通じた共同作業体制がどんなに整備されようが、やはり週に一度は顔を合わせないプロジェクトはうまくいかないとのことです。これは、物理的に合わなくても、例えばSkypeでのビデオ会議でもよいとのことです。そして、重要なことは会った時の会議の長さでなく、回数が重要とのことです。これも超納得で、私も自然にこれをしていました。

ブームを起こす企画に必要なたった一つのもの→リーチするメディアをもっている
アプリでもゲームでもなんでも、ブームを起こすには、そのものがよいだけでは足りず、そのものを多くの人に伝えるメディアを持っているとされています。こういうことって軽視しがちなので、重い言葉でした。

この前紹介したfinalventさん同様、村上さんは、2011年にはアルファブロガー・アワード(2011)を受賞されています。本書は「軽いタッチで書きながら、深い内容を話す」という、まさにブログ発らしい良書に仕上がっています。