ベンチャー企業だからって、人は働かない

私はベンチャー企業で働くことが大好きで、これからもベンチャー企業を通じて色々面白いことをしていきたいと思っているのですが、ベンチャーの経営者の方々と話をしているとちょくちょく聞く言葉が、「うちはベンチャーだから、社員もその意識で働いてもらわないと困る」、「うちの社員はベンチャー精神を失いつつある」という発言です。

私は、ベンチャー企業において「社員」、「経営者に近い立場」両方を経験して思うに、人はベンチャー企業だからって働かないということです。社員からすれば、「働いて、対価として給料をいただく」という意味では、本質的に大企業もベンチャー企業も変わりがありません。これが社員の行動を決定する基本的なインセンティブです。自分の資産を投げ打ってリスクをとってヒリヒリしながらベンチャーを運営している経営者とは本質的に意識が違います。よくいう、「社長と副社長との距離は、副社長と新入社員との距離より遠い」という言葉は、社長を創業者と仮定するとその通りだと思います。

よって、経営者と同じように燃えるように働く社員を得たければ、経営者に、その基本インセンティブを越える強烈な動機づけを与えるセンスがないと無理と思われます。その動機づけはいろんな形があってよく、成長機会、金銭、道義、情熱、技術革新体験、人間的魅力等など、いろんなパターンが考えられます。
その動機づけを与えるのは、経営者の仕事であるわけで、その仕事をせず「社員が働かない」と文句を言っても、「そりゃそうだろ」としかいいようがありません。ただでさえ営業等で忙しいベンチャー企業経営者は、体内的にもやはりめちゃめちゃ忙しいわけです。
けど、逆に私は、この動機づけのデザインが経営者の面白い仕事の一つだと思っています。人間の心理を扱う創造的な仕事だと思うんですよね。