正直、『レ・ミゼラブル百六景』はおもしろすぎた

新装版 「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫)

新装版 「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫)

先週のエントリー(『人間仮免中』は『レ・ミゼラブル』を越える人間活劇 - YOSHIHISA YAMADA’s Blog / 山田義久Blog)で『レ・ミゼラブル』を軽くDisってしまったのですが、全部撤回します笑。やはり偉大な作品でした。そしてその偉大さを感じさせてくれたのがこの本でした。

先週、たまたま芸人の水道橋博士さんの下記ツィートを見つけ、早速この本を買いました。

鹿島茂さんが入念に作った本が面白くないわけがないだろうと。

そして先週末からパラパラと読み始めたのですが、案の定、面白すぎてここ数日で一気に読んでしまいました。
この本は、鹿島さんがパリで見つけたユーグ版と呼ばれる挿絵入り『レ・ミゼラブル』(1879年出版)がベースになっています。このユーグ版の挿絵360枚から選ばれた180枚に、内容の要約が加えられ、ストーリー仕立てになっており、一読で『レ・ミゼラブル』の全体像を把握できるつくりになっています。
さらに、各挿絵には社会的背景の詳細説明も加えられており、各登場人物の言動の含意や、各場面の社会的・歴史的背景が逐一解説されるので、好奇心を刺激されながら一気に読み切ってしまいます。

一方、鹿島さんによると、『レ・ミゼラブル』は、人類愛の物語であると同時に、当時の貧困と無知が生み出す社会の悲惨さ(都市人口の集中、都市環境の劣悪化、産業革命による過酷な労働、失業の拡大等)を告発する社会小説でありながら、後者の側面が軽視されている、と考えておられます。
よって、本書も挿絵・適切な要約で登場人物が織りなす悲哀に溢れたストーリーにぐいぐい引き込みつつも、ユゴー自身の人生や政治活動と、物語の各場面を照らし合わせ、時代を映し出す社会小説としての側面を抉りだし、鹿島さんの見解を加えていく、学術論文的な一面もありました。

このように多面的に楽しめる本であり、超オススメです!


鹿島茂さんについて参考資料
http://special.nikkeibp.co.jp/as/201207/gsc/session3/vol1.html