第2案 ペン型電子辞書

[rakuten:10keiya:10089563:detail]
 私は洋書を読む時には電子辞書を使っている。調べる語数も少なくないし、また既知の単語でも文脈によって変わる微妙なニュアンスも調べたいので、頻繁に電子辞書を使用する。
 しかし、正直、一語一語を電子辞書のキーボードに打ち込むのは面倒で仕方がない。紙の辞書で調べていたときと比べたら、電子辞書になっただけでも有難く思わなければならないのだが、電子辞書を用いて調べたい単語のアルファベットを打ち込んでいる際に、読書のリズムが崩されてしまい不快感を覚える。
 そこで、いつも思うことが、「電子辞書がペン型だったら便利なのになぁ」をいうことだ。ラインマーカーを想像してほしい。ラインマーカーで調べたい単語をなぞるだけで、ペンの取っ手部分の液晶画面にその意味が表示されれば便利でないか。
 ラインマーカーを引きながら、ポン(調べる)、パッ(結果表示)、ポン(調べる)、パッ(結果表示)と、リズミカルに単語調べができたら、洋書を読む抵抗も随分さがるのではないだろうか。
 そのラインマーカーの先端は、色の付いたインクの代わりにスキャナーの読み取り光線がでる。そして、読み取られた電子情報が電子辞書回路に行き、結果を表示する。原理的には可能だろう。
 操作法としては、ペンの親指の部分にボタンを設置する。このボタンのタッチで各種操作をすべて網羅させる。このボタンを長押しで「スキャナー光線照射」、早押しで「選択(複数の候補があった場合の選択等)」、ボタンの横スライドが「カーソル移動」、二度押しで「設定画面」へ移動だ。 

 では、実現するとしたら開発に当たっての問題点は何だろうか。沢山あるだろうが、今思いつくものを列挙しよう。
 第一に、スキャン技術だ。 
 まずスキャン機器を小型化できるか。ペン先に収まるくらいのサイズにならなければならない。
 また、読み解きの精度はどうか。読み取り技術自体は確立しているだろうが、単語単位での読み取りが必要なため、相当な精度が必要だ。さらに、本によって文字の大きさは違うので、スキャン光線のサイズを逐次設定する必要がある(「二度押し設定画面」でする)。 
 一方、スキャンの読み取りスピードも重要だろう。重要なのは、読書のリズムを崩さないことだから、スキャンには、スムーズに読み取って電子情報を発信してほしい。
 第二に、電子辞書だ。
 現在の電子辞書も充分小さいが、ペン型の筐体に入れるためにはさらに小型化する必要があるだろう。しかし、勝手な想像だが、こっちの技術は割かし早急に実現可能な気がする。
 第三は、電力供給だ。
 スキャンと液晶も含めた電子辞書とを稼動されるための電気供給も問題になるだろう。通常の電池で賄えるのか。もしかしたら現在著しい発展を見せている太陽光発電の技術の粋を集める余地もあれば、逆に、ものすごく技術集約で面白い製品ができるかもしれない。

 以上の基本技術があれば、機能的に必要最低条件は満たすだろう。
 しかし、それだけでは面白くないではないか。
 以下、この製品の潜在性を妄想していきたい。
 まず、ペンの筐体内に小型インターネット端末を付け、個人の検索情報を吸い上げる機能を持たせたい。
 この機能により簡単に思いつくのは、人々がよく調べる単語を検索頻度ごとにランキングできる。しかも利用者に生年月日の個人情報を入力をお願いしておけば、例えば学年ごとに"学年別単語集"なるものもできる。また、留学している人々に登録をお願いしておけば、"本当に現地で使う単語集"が自動的にできる。逆に、二つあわせれば、"日本で必死に教えるが現地では殆ど使わない単語集"が網羅的にできる。今まで部分的に口頭で伝えられていた情報が網羅的に整理されるのは、それなりに意味があるだろう。
 また、同じ"単語"を検索した人が、他にどんな単語を検索する傾向があるかを知れるのも面白い。 
 以上のサービスは、大多数の人向けサービスで、ある意味、類似のサービスが存在する"一般的"なものだ。着目される単語も、「大多数の人が調べた単語」が中心である。
 しかし、私は逆にロングテールの尾っぽの部分に着目したい。つまり「誰が調べんねん!っていうくらいマイナーな言葉」を検索する人々である。そのくらいマイナーな言葉はほぼ必然的に固有名詞だろう。
 そのような"少数の人々"は、恐らく極めて好奇心に溢れた人が多いはずである。想像だが、その"少数の人々"は、自分の好奇心を自由気ままに満たしている内にそのマイナーな言葉に辿りついたのだろう。
 その"好奇心溢れる少数の人々"のために当ペン型電子辞書を通じて、サービスを提供するのだ。彼らは恐らく低くない知性を有しているだろう。よって、彼らに、リッチネスの高い情報の提供と、その"少数の人々"間のネットワーキング仲介である。
 まず、リッチネスの高い情報提供であるが、それは、その"単語の意味"(例えば"ビアフラ")に関して、現存するすべての著作(※知名度ごとに分類。その知名度もネット的に数値で評価)、その分野で権威あるとされる雑誌、そして権威ある雑誌のそのトピックを取り上げた記事をすべて纏めてメールで配信する(勿論サービスの授受はユーザーが選択できる)。私はいくらネット環境が発達しても、まだまだ当面「知性の中心は紙面に残る」という信念を持っている。よって、現存するすべての著作の紹介だけでも有用だろう(少なくとも私はすごく助かる)。
 次に、"少数の人々"間のネットワーキング仲介である。
 一般的にマイナーな言葉にまで手を出す人は、好奇心が異常に強く、そして自分が習得したことを、他者と分かち合いたいという人が多い。
 私も、実際、最近「ビアフラ」というキーワードを中心に色んな情報を集めているが、それを誰かと共有したいという強い願望がある。ビアフラ戦争とそのアフリカ情勢について熱く語れる人を探したい。
 そんな好奇心溢れる"マニアックな少人数"をピンポイントに結びつけるサービスはニーズがあるだろうし、サービス形態としても面白いと思う。まぁ、「濃ゆいSNS」と言ったところだろうか。
 一方、これら2つのサービスは、以外と決め細やかなカスタマイズが必要だから、サービス自体高度なネットワークのインフラ上だが、サービスの内容構築には、意外とマニュアル作業が多くなるのかもしれない(恐らくそのマニュアル作業もアウトソーシングが必要だろう…あらゆる知識の分野を中央集権的に集約することは無理だ)。
 以上2つのサービスについて問題点というか、争点となりうることが、また沢山ありそうだ。今思いつくだけでも列挙してみる。
 まず、これはペン型電子辞書を媒体にしているが故に、英語に興味がある人、素養がある人しか、サービスの対象にならないのか。
 というのも、私は正直、日本語版Wikipediaを通じても、この2つのサービスを享受したい。また、Wikipediaを通してでなくても、この日本語版サービスを受けたいというユーザーもいるだろう*1
 一方で、英語を経由したサービスであれば、世界レベルで知的レベル高い人を接続できる。"世界"と言っても厳密に言えば、これは「電子辞書を使う英語圏以外の人」が主なユーザーになるので、「英語圏以外の人が英語を通じて繋がるチャンス」ということになる。逆にどのようなネットワークができて、どのような意見交換がなされるのか興味深々である。
 インターネット経由したサービスは、発想に際限がなくなるので、続きは今後徐々に発表したい。 

 さて、一方でペン型電子辞書のデザインであるが、それはそれは俊逸なデザインを考えたい。
 このペン型電子辞書は、スキャン技術、電子辞書技術、太陽光発電技術、インターネット技術、高度なコンテンツサービス設計、また操作方法に関する人間工学と、意外にも極めて技術集約的な製品になるかもしれない。
 だからが故に、デザインはシンプルがいい。しかし、ただのシンプルなだけでなく、外観にも何らかのフィロソフィーが伺えるデザインがしたい。

 そして、高度技術集約の内部とシンプルな外観との強烈なギャップを演出したい。人も製品も魅力の源泉は、常に"ギャップ"なのだ。

 以上のような妄想に近い美学を理解してくれそうな会社は、、やはりアップルだろうか。アップルが当製品に携わった場合、商品面は、"i dico"で決まりだ。
 
 さて、最後だが、スキャン技術の小型化が重要な技術としてピックアップされるのではないかと考えている。それは、現存する膨大な紙媒体の膨大な知をデジタル化し、ネットワーク上に乗せるツールになりうるからだ。現在、Googleアメリカの図書館の本をすべてスキャンで読み込みデジタル情報に変換する努力をしているが、この素晴らしい努力も、さすが世界の書籍すべてを網羅するのには相当な時間がかかるだろう。そこで、個人単位で紙媒体の知をデジタルに変換し、ネットワーク上に乗せ、多様なサービスを開拓する道も、デジタル上の知識社会の構築を加速してくれるのではないかと夢想している。
 スキャン技術については、(あれば)関連書籍・資料を漁り、調査して、当Blogで結果報告したい。
 当製品の実現可能性についても、今後引き続き模索し、報告していきたい。

*1:ここまで来ると、インタネットサービスとペン型電子辞書を切り離してもいいのでは…となるが、ここでは頭の体操として付き合っていただきたい。