少女漫画『君に届け』を読んだ直後に、映画『冷たい熱帯魚』を観て考えたこと

LINEマンガから少女漫画『君に届け』にハマってしまったことは先週報告しましたが、あの後どうなったかというと、あまりにも続きが気になって最新刊までLINEマンガでは買わずに、コミックレンタルで借りてきて一気に読破してしまいました。

そして、最近自分がやりたかったことに殆ど着手できなかった腹いせに、そのままゲオに行って、前から観るつもりで観れていなかった園子温監督の映画『冷たい熱帯魚』を借りてきて、自宅で観ました。この作品は埼玉愛犬家連続殺人事件という実際にあった事件をもとにつくられた映画で、事件の凄惨さがリアルに表現されていて、かなりえぐいです。。詳しくはこの方のエントリーが素晴らしいです。
映画「冷たい熱帯魚」、愛犬家連続殺人、暴露小説、その知られざる迫真部分 - 新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

君に届け』、『冷たい熱帯魚』とまったく正反対にあるようにあるような作品を愛でた3連休だったのですが、両方の作品から得た共通のインスピレーションを得ました。
それは、「やっぱり場をコントロールしようという意志のあるものは強い」ということと「その意志が正しいか正しくないかの重要性は二次的なものでしかない」ということです。

君に届け』に関しては、私は恋愛漫画というよりは女性同士の友情の描写に興味を惹かれて読み進めました。セリフや心理描写が男同士の友情とはまったく違う点が新鮮だったのです。しかし、当然恋愛が絡んでこないわけないわけで、お互い想い会う2人、届かない想い等、ある意味オーソドックスな恋愛が展開されるのですが、正直私は結構ストレスフルでした。というのも、色んな想いを交換するのに、必要以上に以心伝心しているというか、流れに任せすぎているというか、、、「そこはきちんとそれなりに言葉を選んで交渉すればすべて丸く収まるやろ!」、「そのいざこざ一人で悩む必要ある?」とか、ちょっと登場人物の場をコントロールしようとする意志のなさにイライラする場面もありました。というかかなりありました。
その場を無理にコントロールすることなく、いろんな出来事に翻弄されながらも関係を気づいていくプロセスの描写を楽しむのが少女漫画、、と詳しい方からは怒られそうなんですが、、、

一方、『冷たい熱帯魚』の連続殺人犯村田は、でかい声、オーバーリアクション、強引な言動等、まさに、無教養人を絵に描いたような人物なのですが、後に共犯者になるペットショップ店主、社本を悪の道にぐいぐいと引きずりこんでいきます。村田の言動なんて、冷静に分析すれば、本当に数え切れないくらいツッコミどころがある矛盾だらけの代物なのですが、「場をコントロールしようとする意志」を持つ村田に完全に主導権を握られ、社本は村田の犯行に加担し、人生を破滅させていきます。
私はこれは結構リアルだなと思いました。恐らく現場にいたら、でかい声の村田を正当と認めることこそが場が安定させる唯一の手段であることと無意識で自分に暗示をかけてしまい、村田の言動を自分の頭の中で正当化しよう、正当化しよう、というメカニズムが脳内で働くことはおかしくないと思います。相当強い意志を持っていれば別ですが。

「場をコントロールする」。その意志とスキルは、少女漫画のような憐憫な恋愛をする場合を除いて、凄く有用な能力だと思います。そして、その能力はある意味「正論を吐く」という能力よりも優先順位が高いのかもしれません。