神奈川県の中学生は『惡の華』をまだ読み足りない
神奈川県で中学生が「漫画を見て」教室荒らしをしたことがニュースになっています。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000004615.html
その漫画の名前は伏せられていますが、、押見修造作「惡の華」で間違いないと思います(「惡の華」とは主人公がボードレールの同名の詩集が好きなことから来ている)。
- 作者: 押見修造
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/17
- メディア: コミック
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その教室を荒らすシーンもただ快楽的に教室を荒らすというより、内に秘めた情念を吐き出すように追い込まれた主人公の情念の発露なのです。というわけで、事件を起こした中学生達はまだこの物語の読み込み方が浅いな、、、と思った次第です。
ただの変態漫画と切り捨てるのは簡単ですが、私は結構人間の深い一面を描き出していると考えています。特に、人が人に惹かれるということは一筋縄でない、ということをリアルに描き出していると考えています。
人は人(特に)の興味を引く際に、我々はそれなりに合理的に考えます。その人が好きなものは何か、どのような話題に興味を持ちそうか、どのようなリズムで話をするのがよいか、その人の両親はどのような性格か、、。このように、それなりに周辺情報を集めて、分析した上で、一番最良と思われる行動を論理的に導きだします。
学生時代に必死で好きな子の興味をマジメに考えたりしますよね。そんなあなたはいい人。ただ、だいたい意中の人が、ただ「いい人」なだけのあなたに振り向いてくれることはありません。
大まかに考えます。人は本能的に強い、生命力のある人に魅かれるとしたら、強い人というのは自分の意思や感性を持っているはずでしょう。そして、この世の中、自分の意思や感性を尊重し、それなりに正直に生きていれば、ある程度常軌を逸するのは必然のような気がします。つまり、常軌を逸している人が「もてる」のはある必然といえます。
歴史をみると、文化というのは往々にして常軌を逸したところに生まれ、今日も多くの人々を惹きつけ続けているのと思われます。歌舞伎なんて典型ですね。
このように、『惡の華』「人が人に惹かれる」という現象の複雑さの一端を見せるよい作品だと思います。