破戒者たち<小説・新銀行崩壊>
3月16日に出版されたばかりの高杉良著『破戒者たち<小説・新銀行崩壊>』を読みました。
- 作者: 高杉良
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/16
- メディア: 単行本
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この本は、一応フィクションとなっていますが、2010年9月に経営破綻した日本振興銀行の設立から破綻に至るまでの出来事をモデルして書かれています。登場人物もほぼすべてが実在の人物をモデルにしています。『金融維新―日本振興銀行の挑戦』とWikipedia(日本振興銀行 - Wikipedia)があれば、だいたい登場人物の誰が誰に対応しているかわかります。
先週この本を手にして以来、一気に読んでしまいました。面白かったです。さすが著者は経済小説のプロ、作中の事態の展開のスピード感と、文字を追うスピード感とがシンクロして、ストーリーに引き込まれます。作中の新聞記事も一言一句ほぼ現実の記事と同じだったりと、フィクションながらリアリティを追求されています。また、金融用語にも丁寧な解説もありますので、業界知識がない方も読むことができるでしょう。
前回のエントリー(2012-03-25 - YOSHIHISA YAMADA’s Blog / 山田義久Blog)のとおり、私はこの日本振興銀行を巡る一連の出来事とその中心人物の一人、木村剛さんに強い関心を持っています。
この中で述べた通り、私は、木村さんが2002年から2003年の間に著書の中で語られていた高い志に嘘はないと思っています。
よって、私が、この小説に密かに期待していたのは、下記3点です。
1.高い志を共有した経験値の高いメンバーが集ったにも関わらず、経営破綻に至った要因、また周辺環境詳細
2.もし本当に複数メディアが報じるように、木村さんが最終的に我欲と野心に突き動かされるようになっていたなら、当初の志が変性していったプロセス、またその周辺環境
3.もし本当に一部メディアが報じるように、木村さんが最初から志などなく、すべて我欲と野心の実現のみに奔走していたとしたらその全貌
この小説の中での木村さん(小説内では"村木")の描かれ方は、それはそれは気持ちのいいくらいの厚顔無恥なキャラクターで3.に近い人物設定になってます。愛人の存在まで匂わせたりして(笑)。
それならそうでいいのですが、ただ、本当に木村さんがそんな方だったとしたら、前回のエントリーで紹介した著書の中で志を語ったり、腹の内を晒したりすることに何のメリットもないでしょう。腹に一物あるなら、注目集めず、何も喋らず、こっそり事を進めた方がいいに決まってます。書籍の印税に関しても、本を書く時間をコンサル案件を新規に一本獲得する方が全然儲かるでしょうし。
万が一、その著書もメディアを煙にまくためにの巧妙な罠とかだったとしたら、木村さんは稀代の悪党。逆に違う方向から興味がわいてきます(笑)。冗談はさておき、それは考えにくいですね。
よって、木村さんの描かれ方に注目して本書を読む方にとっては、若干消化不良に感じるかもしれません。
それにしても、木村剛さんを軸に日本振興銀行の創生から消滅まで、そしてこれからも続くだろう事実究明も含めて、失礼ながら本当に多くを学べる教材だなと思います。
あんなに志が高く、経験も能力、実行力もある方が、なぜ東京高裁から有罪判決を受けるに至ったのか。
取り巻く環境がどのようなもので、どのように変わり、どのような影響を受けたのか。
そして、木村さんの社会的地位が変わるにつれて、各メディアはどのように報道を変えるのか。世論の評価はどう変わるのか。そして、(今後ある程度明らかになるだろう)事実と照らして、それらの報道や評価は正しかったのか否か。
小説にはどのように描かれるのか(笑)
自分が社会とどう関わっていくか、を考える際に、本当に示唆に富むと思います。
もし私が大学で授業を持つなら、是非このケーススタディを教材にして、学生を痺れさせたいですね〜笑
まだ読み終わってないので紹介していませんが、この件に関する書籍として下記2冊などもあります。
- 作者: 高橋篤史
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/02/25
- メディア: 単行本
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- 作者: 有森隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/30
- メディア: 単行本
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この2冊でも読みながら、真相が、できれば木村さんご本人の口から明らかになるのを気長に待ちたいと思います。
参考:
たまたま面白い記事見つけました。
http://agora-web.jp/archives/1440415.html
そういえば、渡邉美樹さんと木村さんは『戦略経営の発想法 ビジネスモデルは信用するな』の中で熱い対談をされてました。