写真家塩谷賢作さんとの国際交流会報告


※国際交流会のお手製フライヤー

東京都は、1300万人もの人がいます。
よって都内には、外国と深いつながりを持った日本人や、日本に滞在している外国出身の方が沢山おり、色んな交流会が都内各所で開かれています。

私も、日本とフランスとの交流会を中心に参加いくつか参加させているのですが、その中でも現役世代が中心に集まり、参加者の志も高いPolycultureという会に高い頻度で参加させていただいています。

この会はフランスのビジネススクールINSEADの卒業生が中心となって設立され、もう10年以上運営されています。
月に一回定例会があり、麻布十番のレストランで、各分野で活躍されるゲストを招いて話を聞きながら食事をする、というのが基本スタイルです。
その他、具体的情報としては、ホームページ(Club Polyculture TOKYO - もっと自由に、たくさんの文化、たくさんの人々を)をご覧下さい。

私は、定例会には可能な限り参加していたのですが、今年の4月から幹事の一員に加えていただくことになりました。
そして、いきなり、成り行きで5月の例会の企画・運営のほぼ全権を任されることになってしまいました。
10年以上、毎月欠かさず運営されてきた会の幹事なんて恐れ多くて恐縮してしまい、、、、なんてことは特に思わず、どうせ大きな舞台を任してもらったのだから、自己紹介替わりに何か面白くクリエイティブなスキームを仕込んでやろうと企みました。

こう考えるのにも理由があって、世の中色んなこういった会がありますが、私の考えでは、本当に「面白い会」のイメージは、10人参加者がいたとしたら、だいたい5,6人くらいは企画に反対し、3、4人がひそかに興味を持ち、たった1人が熱狂的に愛好する、という感じです。
この自分の信念を表現したいと思ったのが一点。

そして、もう一つ、この会の趣旨である、フランス人を中心とする外国人の参加者を大量に呼び込むのは、中途半端なインパクトでは厳しいと考えました。
どうせなら、フランス人が熱狂するようなあまり表にでてこない日本の側面を映し出すような企画を。。。と考えていました。

私にとって本当にラッキーだったのが、その会のゲストに決まっていた写真家塩谷賢作さん(http://www.studioaika.com/index.html)が、殆ど私と同じマインドを持っていただいていたことです。塩谷さんが現在、バルト三国リトアニアで活動されている写真家ですが、日本におられる際は浅草を拠点に活動されていました。

そんな二人が考えた「面白い会」のテーマは、「夜闇の浅草(ASAKUSA Dans l’Obscurité)」。
浅草は、昼は有名な観光地ですが、夜の浅草は本当に人がいなく、常連客と地元民が集う別世界に変貌してしまいます。実は、塩谷さんはその夜の浅草に集う人々の生き生きとした表情を被写体として、数々の作品を創られていました(http://www.studioaika.com/photo/01/photo.html)。

そこで、今回は会場を麻布十番から浅草に移し、二部構成にして、第一部はプレゼンで、巨大スクリーンで塩谷さんの浅草とリトアニアの作品を観ながら、ご本人からの解説を聞き、第二部で、実際作品の被写体となった夜闇の浅草を実際に観に行くという、「夜の浅草散策ツアー」を企画しました。

ぶっ飛んだことや、例外的なことをする時は、普段以上にディテールに拘り、細心の準備をする必要があると思っているので、今回は塩谷さんと打ち合わせのために幾度となく浅草に足を運びました。
そして、塩谷さんの計らいで、第二部の最後に凄まじくインパクトのある仕組みを仕掛けることができました。
恐らく国際交流会としてこの場所に踏み込むことは、後にも先にもこの会だけと確信しました。参加者の方々にはかなり貴重な体験を提供できる自負がこの時点ではっきり持てたわけです。

ただ、その場所のインパクトが大きすぎるので、そのことを具体的にこの会の案内文などに書いてしまうと、会自体の趣旨がぶれてしまうことを危惧しました。ただ、この会が唯一無二であることは伝えたい、、ということで案内文は慎重に言葉を選びました。さらに、極力フランス人に来てほしかったので、実は日本語版より、フランス語版の方が、かなり挑戦的な文章で書いてあります。
さぁ、どこに行ったか、下の案内文をもとに推察してみてください。

【日本語版案内文】

5月のポリカルチャーには、バルト三国のひとつリトアニアを拠点に活躍されている写真家、塩谷賢作さんにゲストとしてご登場いただきます。
何よりもまず、塩谷さんの作品を直接ご本人のホームページからご覧ください。
http://www.studioaika.com/index.html

“夜行性のカメラによって写し出される者達。それは光の力によって殺められることなく浮かび上がる、夜に交わるありのままの表情や気配そして独特の色合い。己の心を夜の闇に染めながら、その優しくて暖かい世界を撮影し続けている。夜の街を自在に徘徊する猫達のように、月明かりから隠れて言葉を交わす人々のように、艶かしい光の色を放つ建造物のように”

上記はご自身のホームページからの引用です。
塩谷さんは、現在、リトアニアを活動の拠点としながら、夜行性のカメラを用いて夜間の限られた光を最大限に利用する独自の表現法で作品を発表され続けています。写真集やホームページに掲載されているリトアニアの街並みや人々の営みの写真は、透明感のある高貴な雰囲気と、閑散としながらどこかノスタルジックな雰囲気を併せ持ち、鑑賞者に強い印象を与えます。

今回の企画にあたり、塩谷さんの創作活動に対する考えをじっくり拝聴する機会に恵まれました。
その会話の中で、現在世界に活動を展開されている塩谷さんの写真家としての原点は、浅草にあると伺いました。塩谷さんは、リトアニアに拠点を移される前、夜の浅草の裏通りで生活する人々と街の生の姿を撮る中で現在のスタイルを確立されたのです。「浅草に住んでいなければ、写真をしていなかったと思う」とまで仰っています。浅草は塩谷さんにとって極めて重要な場所なのです。

以上を踏まえ、今回は特別に場所を浅草へと移し、第一部としてプロジェクターがある会場で、塩谷さんにリトアニア、浅草両方の作品をご紹介、ご解説いただきます。リトアニアと浅草、この対照的とも思える二つの場所が、夜の光の作品を通じてどのように繋がるのか、また、その二つの場所に通底するものとして、塩谷さんが何を思い、どのように表現されているのか、塩谷さんの作品を実際に鑑賞しながら感じていただきます。

そして第二部として、作品の被写体になっている“夜の浅草裏通り”を塩谷さんにご案内いただき、散策しながら実際にその雰囲気を味わっていただきます。観光客が消えた浅草寺、街灯のみが幻想的に輝く仲見世通り、シャッターが下りた静寂の商店街等などを経由しながら、かの歴史的にも有名な吉原地区にまで続く裏通りをご案内いただきます。

なお、「裏通り」というと治安等を懸念される方もいらっしゃると思いますが、あくまで散策は、会場から全員で出発し、全員で見学し、全員で浅草駅まで戻るものですし、下見による確認、長期滞在者の同行等を通じて安全面での配慮は最大限行っておりますのでぜひ女性の方も、安心してご参加いただければと思います。

【フランス語版案内文】

Chers amis de Polyculture,
Nous supposons que la plupart d’entre vous avez déjà visité Asakusa qui est une ville traditionnelle avec ses monuments historiques comme le temple Senso-Ji et les vieux quartiers à l’atomosphère nostalgique. En effet, Asakusa continue d’attirer des milliers de touristes en provenance du monde entier.
D’ailleurs, nous imaginons que Asakusa nocturne reste à découvrir. Il est vrai que les quartiers autour de la gare d’Asakusa restent très animés comme d’autres endroits à Tokyo, Cependant, au fur et à mesure que vous vous éloginé, vous vous retrouvez au milieu des régidents locaux ou clients réguliers se réunissant dans un petit coin de quartier désert à lumière tamisée. En vous promenant dans cette ambiance nostalgique, vous aurez même l’impression de remonter le temps.

Cette fois-ci, nous vous invitons exceptionnellement à découvrir cette Asakusa nocturne.
M. Kensaku Shioya est photographe qui déploie ses activités créatives en Lituanie et dans d’autres pays européens avec sa methode originale, il se spécialise notamment dans la prise de photos par vision nocturne.

Asakusa est un endroit important pour sa carrière de photographe. Il insiste que s’il n’habitait pas à Asakusa, il ne le serait pas devenu. En effet, en regardant l’ensemble de ses oeuvres, on peut bien constater que la base de sa méthode originale a été élaborée à Asakusa dans l’obscurité. C’est d’ailleurs pour cette raison que nous vous invitons à Asakusa à cette occasion.

Ainsi, dans la première partie, M. Shioya fera une présentation sur ses oeuvres crées en Litiunie ainsi qu’à Asakusa. Quels sont les points communs et les points différents entre ces deux types d’oeuvres? Comment a-t-il réussi à intégrer Asakusa et Lituanie dans une vue artistique par sa méthode d’expression originale?
Ce sont les thèmes que nous vous invitions à vous questionner.

Ensuite, dans la deuxième partie, nous vous proposons une petite excursion à ‘‘Asakusa dans l’obscurité’’. M.Shioya nous invite à regarder directement les objets qui sont l’origine de ses oeuvres. Au cours de l’excursion, nous regarderons le temple Senso-Ji sans aucun touriste, la rue principale déserte aux formes géométriques et à lumière faible, la rue commerçante où les gens à emploi précaire reste par terre etc. Finalement, nous aboutirons au quartier historiquement connu de Yoshiwara. Parfois, il peut y avoir des endroits difficiles à contempler pour les personnes sensibles, mais nous vous recommandons fortement à nous suivre cette excursion, car regarder l’aspect caché de la ville pourrait approfondir votre compréhension sur l’ensemble de la culture japonaise. Bien-entendu, cette excursion est une activité de groupe, sécurisée et encadrée par du personnel expérimenté.

さて、実際5月13日に開催されたのですが、30人近くの参加者があり盛況でした。
第一部において、巨大スクリーンに映し出される塩谷さんの浅草とリトアニアの作品を皆で堪能しました。リトアニアと浅草、まったく違う場所なのですが、塩谷さんの夜光を最大限に利用した独特のスタイルによって、一種の統一感を感じるのが不思議でした。
さて、その問題の第二部ですが、実は、この会、もうひとつ参加者に特典を準備していまして、第二部の浅草散策の様子を塩谷さんに作品化してもらいました。この会の体験が塩谷さんの手によって、作品として形に残ったのです。

その作品をお見せしながら、その「凄まじいインパクト」の場所の答えとしたいと思います。作品中の塩谷さんの夜光の表現方法にもご注目いただければと思います。








最後の写真が答えです。
分かりますでしょうか?
これは、浅草を抜けた吉原に多数ある著名な「遊興施設」の内部の写真です。

やはり、浅草並びのあの地区一帯を語るにあたり、吉原は外せないでしょう。どのような価値判断をするかはともかく、江戸時代にその繁栄を極め、戦後赤線と呼ばれ数々のドラマを生み、そして現代に至るまでその特殊性を保持する場所であり、映画化される程の歴史を有する場所であることは間違いないのです。ただ、この地区の実体を知る手段は、客として行く以外にありませんし、サービス的なものだけでなく、その成り立ちや構造をきちんと説明してもらうには内部の方の協力が必要でした。

今回、塩谷さんの計らいで(被写体に使われていた)、内部で店の運営に携わっておられる方との交渉が成立し、内部の見学ツアーが実現できたのです。
この写真は、その「施術室」において、私が客役となって座らされ、店員の方に具体的な使用法(?)の解説をしていただき、それを参加者達が聞いている図です。

当日、直前までこの場所に行くことは、私と塩谷さんとの内緒にしていたので、ここに入ると発表した時は一瞬参加者一同、静まりかえりました。
ただ、入店後、誠実に、そして熱心に店内の構造や、サービスの具体的な内容を説明する店員の方の姿に皆の緊張は解けていきました。
そこからでした。
「この椅子はどう使うのですか?」「一日何人くらいですか?」…
女性参加者の怒涛の質問攻撃が始まりました。
それは当然で、女性からすれば、勿論今まで来たこともないし、よほどの事情や嗜好の変化がない限り、今後も一生来ることがない場所です。興味が湧いて当然です。終電ぎりぎりまで猛攻は続くことになります。
参加していただいた外国人の方も終始シャッターを押しっぱなしのご様子で大変満足していただいたようでした。ちなみに会終了後、速攻FacebookでFriend Requestをいただきましたので、私も速攻でConfirmさせていただきました。

震えたのが、参加者の皆さんからの感想で、多かった感想は「おもしろい会だった」とか「おもしろくない会だった」とかいう一般的なものでなく、「昨日は、なかなか眠れなかった」という感想でした。ゾクゾクしますね。

ここだけの話ですが、今回の会について、数々の下見やその他調整費等など含めると、私個人の収支としては完全に赤字でした。
ただ、想像してみてください。
私は、自分が仕掛けた仕組みの中で、参加者の女性達の恐怖、そして茫然としながらも、抑えきれない興味、そして恥じらい、と複雑な感情が微妙に入り混じった表情を堪能することができたのです。
そして、会終了後に、それらの表情を思い出しながら一杯飲んだのですが、これこそまさに至高、貴族の嗜みでした。値千金とはこのこと。ふふふ(笑)

【塩谷賢作さんの情報】
HP:http://www.studioaika.com/
Blog:http://www.studioaika.com/blog/
Facebookhttp://www.facebook.com/pages/Kensaku-Shioya-the-Nocturnal-photographer-%E5%A1%A9%E8%B0%B7%E8%B3%A2%E4%BD%9C%E5%A4%9C%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%AE%B6/201564963218510