The Economist Nov 14th-Nov 20th 2009 ナイジェリアの最近について

最近のThe Economistでちょくちょくナイジェリアの近況報告がされていたが、本号でまとまった長文の記事が掲載されていたので、紹介したい。
一言でいうと、紛争の中心であるニジェール河のデルタ地帯を中心に治安が改善されているらしい。ニジェール河のデルタ地帯と言えば、埋蔵されている石油を巡って40年以上前から紛争の舞台になってきたことはこのブログの関連書籍書評でも紹介してきた。
今デルタ地帯において、ウマル・ヤラドゥア現大統領のイニシアティブの下で、治安回復のみならず、政治プロセスの透明化も行い、民主政治を前進させているようだ。
その代表的なイベントとして、デルタ地帯で暗躍するゲリラに対する恩赦がある。これは、最低限の俸給と社会復帰への再トレーニング、そして過去の犯罪に対する恩赦と引き換えに、ゲリラに対して武器とともに投降することを促すものだ。
過去にも同じような恩赦プログラムは当然あったが、今回は既に一定の成功を収めているようだ。今までに既に15000人が投降したようだ。

この15000人とという数字のインパクトをどう評価するか概算で考えてみたい。
まずナイジェリアの人工は外務省HPによると約1.4億人で、州の数は36だ。よって、大まかに計算して1州あたりの人口を
1.4億人÷36 = 約380万人
としよう。
この中からゲリラに参加する傾向が多いと考えられる10代〜20代の若年層は、ナイジェリアが全人口年齢が低いことを鑑みて、仮に全体の40%と考えよう。
すると、
380万人×40% = 152万人
だ。
この中で過激な行動にでるゲリラがいる割合が1%と考えると、
152万×1%で = 約15000人
だ。
つまり1州あたり15000人のゲリラがいる計算になる。
そして、所謂デルタ地帯は、Delta、Bayelsa、Riversの3州にまたがっていると考えると、ゲリラの総数は、
15000人×3州 = 35000人
と推定できる。
よって今回投降した15000万は、推定全ゲリラ総数35000人の約42%にあたる。
このように考えると、今回の恩赦は少なくないインパクトを持っていると考えることができる。

いずれにせよ、記事で論じられているように、南北の宗教対立、国際テロリストの介入等まだまだ解決すべき問題は山積しているが、ヤラドゥア大統領のリーダーシップは強固なようだ。

ただ、一点付け加えると、ナイジェリアの組織犯罪の存在も視野に入れると、治安の回復や政治の健全化を楽観できないことが明らかだ。
丁度今、手元にたまたま面白い本がある。

世界犯罪機構(W.C.O.)

世界犯罪機構(W.C.O.)

この本の「第8章 犯罪の舞台」にナイジェリアの組織犯罪について詳しく書かれている。ナイジェリアの組織犯罪は、ブラジルの大手銀行すら相手にし、数億、数十億単位の金額を詐取しているようだ。組織犯罪とその傘下で生計を立てている人々は、治安の改善に大きな負のインセンティブを有することになる。その組織の裾野の広さ具合でまたナイジェリアの治安も流動的になるだろう。

今後ともナイジェリアの動きを可能な限りフォローしていきたい。